『ことりっぷマガジン』編集チーフ中山優子×『GENIC』編集長藤井利佳 飾らない世界を届ける、コンセプトと編集のメソッド

2019.03.27

ことりっぷマガジン

中山優子さん

昭文社 出版制作事業部 旅行書編集グループ1975年生まれ。大学卒業後、昭文社に入社。
各企業、自治体からの地図・ガイドブック制作のノウハウや技術力を活かした、パンフレット、ノベルティグッズなどのオリジナルツールの企画編集を担当。
2015年にことりっぷ編集チームに異動後は、ことりっぷ書籍・ことりっぷWEB・ことりっぷマガジンの編集、コラボ商品の監修などを行ない、2018年6月よりことりっぷマガジンの編集チーフに就任。
公式サイト:https://co-trip.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/cotrip_twi

GENIC

藤井利佳さん

ミツバチワークス株式会社 取締役/GENIC編集長1973年東京生まれ。
ラジオ番組の制作からキャリアをスタートし、webメディアの企画運営、雑誌・書籍の創刊、監修、イベントのプロデュースなど、女性向けコンテンツを数多く手がける。
2005年、ミツバチワークス株式会社に創立メンバーとして参画。
以後、国内最大級のガールズブログサイト「Decolog」のディレクションのほか、 東京・大阪・名古屋・福岡で2万人を動員した「ガールズフリーマーケット!」のプロデュース、雑誌『女子カメラ』の監修及びリニューアルプランニングなど、多岐の分野にわたりそのクリエイティビティを発揮している。
雑誌『GENIC』の編集長に2016年9月より就任。2017年4月より、GENIC WEBの編集長も兼任している。
藤井利佳Twitter:https://twitter.com/rikaloha
GENIC公式Instagram:https://www.instagram.com/genic_mag/

旅へいざなう雑誌「ことりっぷマガジン」と「GENIC」。編集長のお二人に、それぞれの雑誌に込められた思いと、編集方法をお伺いしました。

日常の延長にあることりっぷの旅。非日常ではない旅を表現する『ことりっぷマガジン』のコンセプトとテーマ

ことりっぷマガジン 中山優子さん(以下、中山)『ことりっぷマガジン』は、2014年5月に発刊いたしまして、春夏秋冬に発行する季刊誌となっております。『ことりっぷマガジン』の根幹である旅とおでかけというのは、決して「非日常」ではなくって、「ハレの日」ということでもなく、いつもの日常の延長にあるような、そんな旅を目指しています。旅って遠くに行くってものだけではなくって、日常の行動範囲から近い場所におでかけする場所さえ、気持ち次第では、旅だと思うんですよね。もっと気軽に旅に出かけましょうよ、というところをコンセプトにしております。旅先から持ち帰ってきたモノ、また、体験したコトが、普段の暮らしをより豊かにしてくれるといいな、という思いで、『ことりっぷマガジン』を編集しております。

中山ことりっぷというのは、そもそも『ことりっぷ』ガイドブックとして10年前に創刊いたしまして、こちらは、実用書になります。旅に行くからそのガイドブックを買う、というものになります。一方で、『ことりっぷマガジン』では、ガイドブックを買う前に、新しい旅のきっかけになるようなものや、一度旅した場所では、新たなきっかけを探してもらいたいと思っています。

新しい旅先を『ことりっぷマガジン』で見つけて、『ことりっぷガイドブック』をもって旅先に行ってみてほしい、という思いで、ガイドブックとマガジンはそれぞれの目的に合わせた編集をしています。

また、ストーリーのある旅を、というのをテーマにしておりまして。その土地と、そこにいる人やモノを訪ねるとこんな楽しみがあるというのをひとつのストーリーとして、旅を展開しています。例えば、カフェに行きましょうという切り口で、そこで出会ったカフェのオーナーに登場してもらったり、カフェで提供される野菜に注目してみたり、ページをめくるたびに新たな発見があるような、つまり、ページをめくるたびにストーリーが展開していくようなページ構成を心がけています。

GENIC 藤井利佳さん(以下、藤井)国内と海外は、どれくらいのバランスで取り上げられてますか。

中山その土地の雰囲気を伝える小さな特集「海外だより」は、レギュラーで掲載しているのですが、やはり国内がメインですね。一つの大きな特集として紹介して、大規模に撮影取材したのは2019年冬号の台南が初めてでした。

藤井そうだったんですね。台南を取り上げられたのは、国内のように近い旅先だからなのですか?

中山そうですね。今って、LCCも飛んでいて、台北は、国内と海外の間のような存在になりつつあると思うんですね。台北に行かれる方もかなり増えてきていて、その方たちに対して、その次となる新たな旅先として、台南を紹介できたらと思い、取り上げることにしたんです。読者からの反響も大きかったので、今後は海外も含めて企画を検討していきたいと思っています。

日本の女の子たちへ。GENICが届ける、憧れの世界、憧れで終わらない旅。

藤井GENICは、2006年に『女子カメラ』として創刊して、2015年の12月に『GENIC』という名前に変え、その1年後に私が編集長に就任し、外国人にたくさん出てもらうようにしたり、判型(本の大きさ)を変えたり、洋開きに変えたりしました。

女の子に「もっと写真が撮りたい!」と思わせられるような雑誌でありたい、というのは『女子カメラ』の創刊当初から変わらない思いなんですが、写真を取り巻く環境がとても変わってきたので、それにあわせてリニューアルをしている、という感じです。女子カメラの創刊当初は、写真が好きな人だけがカメラとレンズを持って、撮影するためにお出かけに行くようなものだったけど、今はスマホというカメラを、誰もが常に持ち歩く時代になったんですよね。写真を撮りたいという気持ちは、一部のカメラ女子が持っているものではなくって、女の子みんなが持っているものになってきていて。なので、カメラ女子に向けた、レンズの使い方や細かなカメラのテクニックよりも、女の子みんなが、こんな写真を撮ってみたいと、こんな撮り方もしてみたいと、思えるようなコンテンツを載せるようにしてます。

雑誌を開いたら、脳がチクチクするような、ビリビリと刺激されるような何かを出していきたいと思っています。『GENIC』の編集のポイントのひとつですが、『GENIC』に掲載している写真のほとんどは、一般の方が撮影してたもので、撮影セットを組んだりしてプロカメラマンが撮った写真ではないんですね、つまり、誰でも撮ることができるんです。それを見た人たちが追体験したくなるというか、あなたにもできるんだよ!憧れとして諦めないで!もっと女の子って、楽しんでいいんだよ!って、ひとことでは言い表せないのですが、そういう思いを雑誌を通して届けたいと思っています。
最近は「Who Rules the World ? GIRLS!(世界を支配しているのは誰?女の子たちだよ!)」というのをテーマにしていて、女の子であることをもっとガンガン楽しんでいこう!というメッセージを出していきたいと思っています。また、その方法のひとつとして、「日本から見た世界」ではなくて「世界から見た世界」を日本の読者のみなさんに知っていただきたいと思って、海外の方が撮影された写真を多く掲載しています。世界の女の子たちの世界の楽しみ方を、日本の女の子たちに伝えたいんですよね。

中山いやほんとうに、海外の雑誌みたいですよね。日本の雑誌ではないみたいな。なんというか、海外らしい写真の色みがことりっぷとは異なる方向で、すごいです。

藤井そうですよね、海外の方だからこそ、生み出される色みというか。

あえてスタイリングをしないという共通点。飾らない世界を届ける理由。

中山スタイリングされていない写真という、確かに女の子たちが撮っているので、そこにあるものだけで撮られているんだろうなとは思うのですが、スタイリングされているように見えてしまうほど、構図が工夫されていますよね。
実は『ことりっぷマガジン』も、旅先をきりとった、読者がそこに行ったような気持ちになれるように、あまりスタイリングはしないようにしているんですね。その分『GENIC』の写真と同じで、構図ですね、撮る位置や画角を気をつけていますね。実際に旅先に雑誌を見て、足を運んでくださった時に、写真と違うじゃんかってがっかりさせたくないというのがあるんですよね。なので、スタイリングをしないというのは、届けたい世界観が違うなかで、意外な共通点なんだと驚きました。

藤井あなたも行けるんだよ!というのを届けたいというのが、スタイリングをしない理由ですね。追体験できるような写真を載せるようにしています。

中山そうですよね。ことりっぷも同様で、実際に行かれた時に受ける印象を、雑誌でも届けたいというのがあって、スタイリングをしないのはもちろんですが、写真の色みや光についてもカメラマンさんに工夫していただいていますね。

時代が進むのに伴い、近づく海外。GENICの考える「地球生まれの女の子」とは。

藤井『ことりっぷマガジン』2019年春号には、ヨーロッパの記事も入っているんですね。

中山そうですね、先ほども台湾の話をしたんですけども、海外もものすごく気軽に行くことができる状況ですよね。非日常じゃない、ちょっと電車に乗るように、飛行機にも乗って、さっと旅するみたいな。これまでは、旅行って言っていたけれど、旅という言葉が、今はしっくりくるような時代だと思います。

藤井そうですね。あんまり準備をしなくても、すごくカジュアルに飛び出して、着いてからスマホを使ってマップみて、あっち行こう、こっち行こうって旅ができるし、また金銭的にも本当に安く旅ができますよね。

中山『ことりっぷマガジン』や『GENIC』を読んで、旅のきっかけをつかんだら、ぴょんと旅ができるというか、その気軽さっていうのがほんとうにいい時代だなと思いますね。10年前は、海外旅行ってもっと遠い存在でしたよね。

藤井旅行を予約するのも結構手間がかかりましたよね。旅行カウンターに行かなければならなかったし、今ではスマホでこんなに簡単に予約ができるのに!

中山そうそう、旅行に行くということがかなり気軽になったのも、旅行が非日常ではなくなってきていることにつながっていると思うんですよね。日常の延長線というか、日常の中に旅があるというか。

中山『GENIC』は、国内よりもあえて海外の情報を多く取り上げられてるんですか。

藤井今は、海外の写真が多いですが、2020年に向けて日本も取り上げていきたいと思っています。こんなスポットがあったんだって再発見できるようなものを作っていけたらと思っています。
自分が生まれた故郷を知りたいって気持ちって誰にでもあるじゃないですか、例えば、福岡で生まれたら、福岡を知りたいって気持ちって強くあると思うんですよね。その気持ちって、福岡から、九州に、九州から日本にってどんどん広がっていく。生まれた日本を知りたいって気持ちは、日本人なら誰しもあると思うんですよね。それで最終的には、さっきの話の海外が近くなりつつあるという話に繋がるんですけど、すごくくさい言い方をすると、地球に生まれてるじゃん、みたいな。

中山地球…!すごく大きい。地球人だ、みたいな。

藤井そうです。すごく海外を近くに感じるようになった今だからこそ、私が生まれた地球を知りたいよね、みたいな気持ちになってきていると思うんですよね。だから、日本、海外と分けて考えるのではなくて、地球全体として見て、刺激的な場所をピックアップしていきたいと思っていますね。その結果、今は海外が多くなってしまっているという感じです。海外に行こうよ!というより、女の子であることをもっと楽しもうよ!というメッセージを込めてピックアップをしているので、もちろんそれが結果的に日本である時もありますね。

旅に行かなくても、旅ができる。「そこにいる自分」を妄想させることりっぷのストーリー。

中山『GENIC』の場合、読者が女の子であることをもっと楽しむようになったり、主人公が読者である「自分」になるのかなと思うのですが、『ことりっぷ』だと、「自分」というよりは、「そこにいる自分」みたいな感じになってくるんですかね。自分が主役の写真っていうのは、ことりっぷにはなくって、そこに自分がいるような、追体験ができるようなコンセプトで作っているので、同じ「旅を楽しむ」コンテンツだとしても、趣旨は若干違うんだろうなと思いますね。

中山『ことりっぷマガジン』では、読者の方にアンケートをお願いしているのですが、その中で「旅に行きたいけど、なかなか行けないので、ことりっぷマガジンを読んで旅をしています」という声もいただいたりしていて、読むことで旅を妄想して、旅をしている読者の方もいらっしゃるんですよね。そこに行くわけではないけれど、その土地の魅力を知っていただけるという形も、これもまたいいなぁと思っています。

藤井そうですね。『GENIC』も『ことりっぷマガジン』も、これを知りたいんだと、目的をもって開く雑誌ではないですよね。
来週行くとか、来月行くとかって決まっている場所をリサーチするために読むというよりは、読んで素敵だなと思って頭の中に残った場所が、いつか旅をしたいと思った時に思い出されて、行ってみようと思ってもらえる、そういう読み方をしてくれたら嬉しいなと思いますね。

中山まさにそうですね。あの風景の、あの場所というのが脳裏に焼き付いているというか。実際に、旅をしていて、あそこ行きたい、ここ行きたいと観光スポットも巡るんだけれども、結局頭の中に残っている風景というのは、その道すがらだったりとか、たまたま話しかけてくれたおばさんだったり、予期しないことだったりするんですよね。そういうものを『ことりっぷマガジン』のなかでも見つけてもらえたら嬉しいなと思うんですよね。

 

前編では、『ことりっぷマガジン』と『GENIC』の雑誌のコンセプトと、そこに込められた思いについてお話しいただきました。同じトラベル雑誌でも、個性がかなり違いますが、飾らないそのままの景色を伝えるための写真など、意外な共通点も見つけることができました。

後編では、それぞれの雑誌が届けたい旅のかたち、そして、編集長が考えるこれからの旅のお話など、『ことりっぷマガジン』と『GENIC』にとっての旅について、語り合っていただきます。

ことりっぷマガジン Vol.20 2019春号

今号のテーマは「お茶にしよう」。巻頭特集は「お茶のおいしさに出会える新しい東京の旅へ」と題し、こだわりの日本茶を楽しめる都内の新しいティーサロンやお茶カフェ、老舗和菓子店などをご案内しています。第二特集では「訪ねる理由のあるカフェ」をご紹介。旅の目的地になるような、わざわざ訪ねたくなる理由のある調布、瀬戸内、鎌倉、岡崎、札幌のカフェを掲載しています。

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GENIC(ジェニック)

Camera, Travel … and Everything
「GENIC」は、毎日をフォトジェニックに送りたい女性のためのヒントをたくさん詰め込んだ、
カメラとトラベルのライフスタイルマガジンです。
流行の写真のスタイルや世界が注目する旅先、最先端のカメラの紹介など、
読むだけで日々をセンスアップできる雑誌です。

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カメラマン

片渕ゆり

コピーライター・フォトグラファー。学生時代に海外ひとり旅のおもしろさに目覚め、現在は会社勤めのかたわら旅をしています。そろそろ世界一周に行こうとたくらみ中。Twitterとnoteで、毎日情報発信しています。

Twitter:https://twitter.com/yuriponzuu

note:https://note.mu/yuriponzuu

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